稲藁の育つ地

新潟県糸魚川市・能生

はしだての稲藁は、新潟県糸魚川市(いといがわし)、能生(のう)地区で育てられています。

日本の宝石の原点とも言われる翡翠(ひすい)が古代より採取されていた糸魚川。「三種の神器」のひとつである勾玉(まがたま)に使用されることでも知られています。その翡翠の象徴ともされる奴奈川姫(ぬなかわひめ)のもとに大国主神が出雲よりはるばる求婚に赴いたことが日本神話『古事記』に記されてあります。能生地区は、奴奈川姫が生まれた地とされ、大国主神が求婚の際に通った「神道山」がある神秘的な場所です。

古墳時代にはすでに稲作がなされており、海も近いことから海産物にも恵まれて古代より人々が豊かな暮らしを営んできた土地でした。

眼下に日本海を臨み、見上げれば日本百名山の1つ2000m級の火打山(ひうちやま)が峰を連ね、冬には日本海からの風が山々にぶつかり、多くの雪を降らせ豊富な水源をもたらします。様々なミネラルを含ませながら能生川に流れ込み、その栄養豊かな水を田んぼに引いて丹精込めて育てられた稲藁。豊富な資源と自然の恵み、そして神秘な土地の力を宿した、はしだての稲藁です。

米と藁

藁とは、稲・小麦等などのイネ科植物の主に茎を乾燥させた物です。稲は稲わら、麦は麦わらと言います。
稲わらの稲はお米です。私たち日本人は古くからお米を糧として生きてきました。その起源は神話に見ることができます。神々がいる天上の高天原(たかまがはら)から天孫降臨する瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)に天照大御神は稲穂を授けて言いました。「私が高天原で育てた稲穂をあなたに与えましょう。国民の糧としなさい。」お米は生きていく糧であり、稲作を軸に日本人の生活や秩序が形づくられてきました。そして、豊穣を祈り、収穫に感謝することをカタチにしてきたのです。

現在、お正月によく目にする「しめ飾り」の原型が「しめ縄」です。わらを綯ってつくるしめ縄は注連縄、占縄、標縄など記し、神が占有する場所を示すものとされました。のちに結界や邪気を払う魔除けのような意味合いも含んでいき、現在も神聖性を示すものとして存在します。